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2024.8.16

なぜ、今、Play KIMONOを始めるのか。

今回は、Play KIMONOに至るまでの、呉服・着物業界の現状を振り返り、少し知っていただけたらと思います。

 

着物のハードル

着物を着てみたいという気持ちがある方は多いのですが、そこには数多のハードルが待ち構えています。

例えば、

・着用方法がわからない

・どこで買えば良いかわからない

・周囲に教えてくれる人がいない

・思い立って呉服店に入るも、高価、品質が不透明、良くない商慣習が多数

・しきたりがわからない

・着てみるも活動しづらい

・良くも悪くも目立つ

・クリーニングや保管の問題

など、たいていはこうしたハードルのどこかでつまずきます。

 

着物を着たい

しかし、「着物を着てみたい」という気持ちは、多くの日本人が潜在的に持っているようです。さらには日本人に限らず、外国の人にさえ、似た気持ちはあるようで、京都など観光地でのレンタル着物はよく利用されています。

着物を着ない理由の調査は多々ありますが、その回答に「着物が好きではないから」というのは出てきません。

むしろ着物を着たいけれど、上記のハードルにより、阻まれているのが実態です。

 

これまでの解決策

こうした課題に対して、柔軟な思考の呉服業者がやって来たことは、下記のようなものです。

・着付け教室(無料・有料)

・ヘアメイク、着付けの提供

・化学繊維の着物

・2部式着物、簡単に締められる帯

・流通の短縮

・リサイクル着物

・着用イベントの提供

・youtubeなどでの啓発活動

そこには、企業の利益のために考えだされた施策も多くありますが、善意からのものも多数あります。

 

現状の着物では解決しない

ただ、これらの解決策にも関わらず、着物の需要が拡大する傾向にはありません。物作りに関して言えば、高品質の着物は最盛期(昭和50年ごろ)の0.01%と言っても過言ではないほどです。

まず結論を言ってしまうと、アプローチを変えたとしても、出来上がりは着物スタイルを目指しているがために、 やはり動きにくく、日常的な着用は困難です。

それゆえ、洋服に比べて活動性、快適性ともに低く、日常的に着用されていません。

 

私がなぜ呉服屋を始めたか

自己紹介が前後しましたが、私はPlay KIMONOの代表をしている原巨樹(はらなおき)と申します。京都にて、2014年、京ごふく二十八(ふたや)を立ち上げました。

京都出身ではなく、大分県出身で、実家も呉服とは無縁です。

呉服屋に至る経緯は項を改めるとして、起業した目的は「職人の後継者を作る」ということ、ただ一点にあります。そのためには多くの人に着物を購入して、着てもらえる世界が必要です。

裸一貫という言葉が相応しく、お金が無いにも関わらず、高級呉服のオーダーメイドで商売を始めて10年が経ちます。

競争優位性は、流通をシンプルにすることで、お客様の理想に近い着物を、圧倒的高品質かつ相場よりも抑えた価格で提供できるところにあります。

 最初は家賃1.5万円のシェアオフィスから始めましたが、今では京町家で商売をできるようになりました。京都でも、同じクオリティのオーダーメイドで、小売と製造管理をやれる会社となると、おそらく存在しないことでしょう。

 

このままでは着物はさらに衰退する

そのぐらいを自負できるようにはなったのですが、それでも私が一人で商売をする規模にしか成り得ていません。

最高のお着物をお求めくださるお客様のお陰で、少しずつ成長はして来たのですが、京ごふく二十八の成長スピードと、職人さん達が減っていくスピードを比較した時に、とてもではないですが追いつけない状況です。 

呉服屋を志してから15年、起業して10年。このままでは着物の衰退に歯止めを掛けられる予感がしないというのが正直なところです。

絶滅はしないかも知れませんが、かなりレベルダウンした着物しか作れなくなる可能性は高いと言えます。

 

文化的アスリートだけではなく、着物ビギナーも楽しめる世界を目指す

現在の着物は、フォーマルな留袖、振袖、訪問着などに始まり、小紋や紬などカジュアルなものまであります。ただ、それらも全て着物の構造的な問題は変わりません。

現在、自力で着物を着用している方々というのは、こうしたハードルを乗り越えた熱意ある着物愛好家の方々です。

日本文化をスポーツと見立てるならば、オリンピックや全国大会に出るレベルの文化的アスリートとも言えるでしょう。呉服業界がお客様にしているのは、こうした文化的アスリートの方々だけです。

実際、着物を着るためには暑さ寒さにも堪え、茶道などのお稽古事を続けると脚を痛めて正座ができなくなったりもするハードなものです。

もちろんそれで到達できる高みというのもあるのですが、誰しもができることではありません。スポーツで考えるならば、裾野はもっと広く、市民ランナーや草野球、健康のために歩く人達、子ども達までがユーザーたり得ます。

着物の世界では、こうした誰でもいつでも気軽に、というステージが存在しないのです。また、あったとしても、目につかなかったり、洗練が無く、特殊性が際立っていたりします。

 

Play KIMONOは洋服よりも快適に

Play KIMONOが目指す衣服は、全てとは言いませんが、洋服よりも快適で、見栄えがすることを目指します。

例えば、実現したいエッセンスとしては、

・「和装ってなに?」というところから、根源的に考える

・多様な和装の歴史をベースに

・機能性素材を用いて、アウトドアウェアの快適さを

・シンプルである

・現代の街並みに馴染む

などのようなことです。

 

洋服よりも快適であれば、着てくれる人は必ず増えると思います。

加えて正直なことを言えば、洋服は、日本人にあまり似合いません。日本人同士であれば気付きにくいのですが、西洋の人と比べれば明らかで、欧米人の体格があって見栄えのするのが洋服です。共感してくれる方は多いのではないでしょうか。

 

Play KIMONOで和装を増やす

私も含めて、それなりの着物ユーザーであっても、

「日常生活に着物を着るのは不具合が多い。それゆえ、動きやすさ、入手しやすさなどを考慮すると、普段着は洋服になる」

というのが、衣服選択の論理です。

そこで、

「動きやすく、入手しやすい和の服があれば、もっと和装をしてくれる人が増えるはず」

というのが、Play KIMONOの仮説です。

 

Play KIMONOはほぼアパレルの生産背景なので、商品の製造が増えても、着物職人の仕事が増えるということには直結しません。

しかしながら、

・着物の裾野が広がること

・使いやすいアイテムができた時に、それを工芸品として生産すること

・弊社の事業規模が大きくなった場合に職人を直接雇用する

などの道筋は見えてきます。

こうした未来を目指して、Play KIMONOを立ち上げました。また、皆さんのご意見をお聞かせいただける機会を楽しみにしています。